【編集部講評】「将軍」のように厳格な父親の老いを機に、初めての遺産相続に向き合う家族を描いたコミックエッセイ。「父の死」から始まり子ども時代の回想につなげていく展開が見事で、冒頭から物語に引き込まれた。昔気質で強権的な振る舞いをしてきた父親の姿。そんな父親に対してそれぞれ複雑な思いを持つ家族の姿は、どれも等身大でリアルに描かれており、感情移入しやすく人物造形に好感が持てた。家族愛に溢れる感動的なシーンをはじめ、全体を通して構成や演出の完成度が高い作品だった。一方で、遺産相続の具体的な手続きについては詳細な説明があるわけではないため、遺産相続の経験がない読者にはわかりづらい部分も多々あり、エピソードと実務的な描写の両立には課題が残る。「家族の柱であった父の死」あるいは「父の終活」といったテーマを据えることで、読者がより共感できたり、カタルシスが生まれる作品になるのではないか。
最終更新日 :
2025年04月23日 (水)